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ヤナギ10

だから獣人の里へは置いておけない。あそこは排他的でヤナギにとっては為にならないと。それに、とさらにビィは、 「ヤナギの力を封印はしていますが、その封印は彼が幼い頃にしたことで、それが彼の成長とともに力が変化する可能性もあります」 母親のラナカが居なくなってしまった今はその変化もわからず大事が起こる前に、自分が近くにいれば対処の仕様があるハズだとそう言った。 そのヤナギがここへ来ることになった経緯を聞きながら優斗は、 (そうか、ヤナギはお母さんもお父さんももういないのか、俺は、ここにはいないけど、向こう側には母さんも父さんもいるし。まだ、良いのかな) そう思いながら、ソファーのすみで(さっきビィに寝かされてしまったままの)ヤナギの丸まって眠ってしまっている背中と頭をそっと撫でた。 (でも、ここで1人ぼっちになってしまった。というのは少し似ているね。だけど、ヤナギにはビィはいるけどね。俺もランフィスがいるけど……。母さんと父さんがこの世界にいないのは……いっしょだね) 優斗は、ヤナギを抱き上げて、そのまま、また膝の上にのせて撫でる。抱き上げてもちっとも起きる様子もなく、明らかに熟睡していた。そのなんだか温かい塊を膝の上にのせて、 "いいなあ、かわいいなあ……このまま猫のままでいいのに" 小さく囁くように言うと顔がなんだか緩んでくるのがわかった。すると、ふと顔を上げると、ランフィスが先程と同じような不機嫌な表情をまたしていた。 (……なんでランフィス?怒ってる……?ん?もしかして?) .

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