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触れたい-1
……
………
…………
──どうかしている。
執務室へ戻ったランフィスは一人になると自分がどうしてああいう態度をとってしまったのか自分でも分からなくて困惑していた。
(ただ、ユウトがヤナギに優しくしているのを見ると、なんだか……)
得体のしれない気持ちになった。もやもやしていて書類に目を通してもなかなか頭に入らない。こんな時、以前だったのなら近侍のレンと色々話すことが出来た……。
だけどそれはもう叶わない。
ランフィスは晴れない気持ちを落ち着けようとした。だけど、先程の優斗とヤナギのやりとりが頭にちらついてくる。
──ユウトはあんなに優しそうな表情をしていた。
ランフィスには見せたことが無い表情であった。
(・・・これは、私は嫉妬しているのか?)
ランフィスは今までそんな感情を持ったことはなかった。だけど、今それがそうなんだと気が付いてしまった。
………
……
…
夕飯の時間になってもランフィスは優斗と一緒に食事はしなかった。執務で忙しいのか執務室で軽く食事を取ったようだった。
優斗は、いつもだったのなら夜はすぐベッドで横になってしまうのだけれども、今日はそういう気にもならなくて、ランフィスを待つことにした。
(……今日のランフィスはどことなくおかしかったし……)
そう思いながらソファーに座りながら暫くしていると、ランフィスが部屋に戻って来た。
「ランフィス、おかえり」
優斗はニコニコしてランフィスを迎える。
「……ただいま」
ランフィスは一見いつも通りの様子なようだったけれども、優斗にはなんとなく少しぎこちないように見えた。
「……何かあったの?」
ランフィスはゆっくりと優斗の隣に座りながら言った。
「……何もないよ?」
「でも、ランフィスの様子がいつもと違うような気がして」
ランフィスはしばらくじっと優斗を見つめて、
(……ユウトには適わない……)
そっと心の中で思った。
"それは……"
そう小さく囁いてランフィスは優斗を抱きしめる。
「ランフィス?」
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