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茶色の2-2
"ぅにゃー"
……何か掠れた鳴き声…?これは?この声は?
優斗は急いで声の主を探す。まさか、ベッドの下にいるのかと思ってベッドの下を覗いてみる。
「いないよね」
確認してから今度は、部屋のドアを開けてそれからリビングの方へ向かうと、はっきりとした声が優斗の耳に聞こえた。
"にゃうぅ"
鳴き声。これはやっぱり、
「ヤナギ?」
ヤナギの声だ。ヤナギがいた。
「何処にいるの?」
優斗が何処かにいるヤナギに向かって言う。すると、
"ニャウー"
足元から鳴き声がした。優斗は身を屈めて下のほうをきょろきょろと見回した。と、ソファーの奥下に入り込んでいる茶色の毛玉のヤナギが見えた。
「ヤナギ!!なんでここにいるの?早く出てきなよ?」
だけど出てこない。
「どうしたの?」
よくよく見ると、ヤナギの前足の爪がソファーの布地にひっかっかってからまってしまってなかなか取れないようだった。優斗が、一生懸命ソファーの下へ手を伸ばすも奥のほうにいるせいで手が届かない。
「ヤナギ、人型にもどればいいんじゃ?」
"ニャァア!"
大きく鳴きながらそれは無理というように首をぶんぶんと振る。よくよく見るとソファーは大きいし、その下は狭いしそこで人にもどったらさらに大変な事になってしまうのだろう。
ソファーをとりあえず動かそうと優斗は、壁際からすこしずつソファーを押しながら動かす。ソファーは重くてやっとの事でようやく壁とソファーの間に隙間が出来た。どうにか優斗にも入り込めるそうだった。やっと、ヤナギがはさまりこんだ場所へ行って、からまっている前足の爪をそっとはずして出してあげた。ヤナギはソファーの下に入り込んでいた所為かもふもふした毛並みが毛羽立ってしまっていた。
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