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ランフィスとヤナギと-3
「講義の声とか聞こえて仕事中、煩いんじゃないの?」
優斗は言ってみたけれども、ランフィスは気にしていないようだった。
こちらの言葉は分かってはいたが、文字が読めない。読めないから本が読めない。城にはきちんと図書館もあるのに。そんな状態の優斗だったので、色々とこちらの世界の事を学ぶのは嬉しかった。優斗は元の向こう側の世界にいた時には、図書委員もやっていたほどに本が好きだった。だけど今、本を読みたくても読めないというのはとても嫌だった。
こちらの世界の事を色々を学ぶにつれて、優斗が感じたのは、"とても楽しい"という事だった。元のむこう側の世界でのあの退屈な勉強はなんだったのだろうかと思った。自分が欲しているリアルを学ぶというのはとても楽しくて、こちらの世界に来てからまだほんの僅かだというのに、向こう側の自分のいた世界の事はとても色褪せて遠いように思えてきた。
だけど……。
(絶対に戻れないのかな・・・)
遠い事のように感じても、やはり、戻れるのなら戻りたい……と優斗は思う。
(もし、戻るのならば、こちらの世界の人達……この陽の国にとっては・・)
気を生み出す事が出来るのは、ランフィスとパートナーの自分だけである。
だから、この陽の人々にとって自分が元の世界に戻ってしまうのは、国の存続にかかわってしまうのだ。
(だけど……、でも……)
と、優斗は思ってしまう。
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