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ランフィスとヤナギと-4
一度だけでいいから、向こうの元の世界に戻って、それできちんと皆に会ってからこちらへもう一度戻ってくれば……。
優斗は何も言わずにこちらの世界に来てしまったのがとても心残りだった。
(向こう側では自分は行方不明状態になっているのだろうか?それとも?時間はこちらの世界と少しズレがあるようだから、実際はどのぐらいの月日が経っているのだろう?)
戻るには……。
(落ち人・・。になることしかないのだろうか?)
だけど、それがどういう状態で起こるのか分からない。なんらかの磁場の所為と、前ギオが言っていたのを優斗は思い出したが……。
(それも良くわからないみたいだし……)
優斗は落ち人ではない。もし落ち人として、向こう側へ行けたとしても、同じ時、同じ時代に戻るとは限らない。
(戻れたとして、果たして自分がいた同じ時代に戻れるのだろうか?自分が生まれるはるか前だったりそれとも未来だったりしたら……今よりももっと困る)
だから、
(もっと文字が読めるようになってここの図書館やもっと他に何かそういった事が書いている書物とかあるかもしれない。だから早く文字を習得しないと……)
そう思いながら優斗は一生懸命、文字を書いて覚えていた。
ふと優斗が前を見ると、ヤナギが机に突っ伏して寝ていた。
書庫だったここは、明り取りの窓が天井に付けてあった。書庫の時はそれが塞がっていたが、今はそれが解放されていた。
そこからの日差しが、とても気持ちいいぐらいに届いていて昼寝には最適な具合になっている。それが、快適すぎるから、勉強の時は明り取りの窓は閉めてしまおうかと優斗は思った。
「ヤナギ、寝てると、ビィが戻ってくるとまた怒られるよ?」
そう言ってヤナギの頭をペンでつついた。
…………
……
…
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