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第Ⅲ章/ その日-1
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その日は突然にやって来た。
最近にしては珍しい薄どんよりとした曇り空で、優斗はランフィスに呼ばれて祈りの櫓へ向う。祈りの櫓はランフィスが気を世に放出するための場所。優斗は以前、一度だけ来た事があったがそれ以来、この祈りの櫓へはくることはなかった。でも、今日は何故かランフィスに呼ばれて一緒に行くことになった。少し不思議に思いながら一緒に歩いて行くと、そこには皇のバスティンがいた。
「上皇?」
思わず優斗が言う。
まだ、ランフィスに皇の全権を委ねてはいないので前皇ではなく、未だ皇ではあるが、だが、すでに称号はランフィスがパートナーを迎えた時点で上皇になっている。
「ランフィスとユウトか?」
バスティンはいつにもまして弱々しい。傍にはパートナーのレイアもいる。
「今日が納め時のようだ。全皇の記憶と知識をさずけよう」
そうランフィスに言うと、ユウトとレイアの方を向いた。
「ユウトとレイアは見届け人としてそこへいてほしい」
レイアが静かに頷く。
優斗には行き成りな事でよくわかっていなかった。だけど優斗以外のランフィスもバスティンもそしてレイアも何が起こるか分かっているようだった。
優斗が戸惑っていると、バスティンは優しく微笑んだ。
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