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再会とそれから-1
イハクが登城したのはそれからしばらく経った後だった。ついにこの日が来たのかと、普段着ないようなイハクとしてはきちんとした身なりを整えて緊張して出かける。
「この度はユウト様の肖像画を描く権利を頂きありがとうございました」
深々とランフィスに頭を下げ皇への挨拶をする。そして、顔をしずかに上げると、ランフィスの傍にいる優斗から目を離せなくなった。
(……ああ。久しぶりに会っても、綺麗だよなあ。さらに、綺麗になってる。この前よりも、映像で見た時よりも……)
「イハク久しぶりです。街では助けていただいてありがとうございました」
優斗はイハクをにこやかに応対する。
「……ユウトが街へ落ちてしまった時、助けてもらって本当に感謝している。約束した通り、宮廷画家へと推薦したが、ただ、他の候補の者と比べ、最終決定は絵を見て判断する」
ランフィスはイハクをじっと見ながら少しため息交じりな様子で言う。
「それで充分でございます」
イハクはそう言って深々と再び頭を下げる。
(……ユウトが上手く言ってくれたとしても何か思うところがあってもおかしくないものな……できうる限りこれからは誠実にしないと色々ヤバい……正直、ここへ来る事ができたのが奇跡だしな)
皇室の肖像画を描く者は常に決まっていて、今回代替わりをする。そのタイミングで優斗のお披露目等も重なり、次の正式な宮廷画家を決めるのには優斗の肖像画を描き判断される事となった。各地で選ばれた画家達は候補にはなるが、後ろ盾も何もないものは選ばれるのは難しい。だけど、後ろ盾もなにもなかったはずのイハクが優斗という後ろ盾を得てしまった。
実際の話、皇宮へ直接上がっての宮廷画家になるのはとても名誉なことなのだけれども、他の大きな仕事はあまり受けられなくなる。色々なものを描きたいのならば、宮廷画家となるよりも、その候補になったという箔がつけばいいのだ。
ただ、宮廷画家になればその名誉と知名度は上がる。
安定したお金も得られるが、だけど冒険的な色々な絵はなかなか描けなくなるだろう。
(実際俺は、どうしたいんだろうか?)
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