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記憶の

…… ………… …………… 向こう側への扉。ランフィスは皇の記憶を受け継いでそれを理解したが、ただそれが何処にあるかは分からなかった。わからないままに記憶の通りにそこを目指して探して行こうとしていた。受け継いだ記憶の通りならば皇宮の奥のどこかに水を湛えた場所があるはず。 (池……?なのだろうか?) ランフィスの知る限りではそのような場所は見たことがなかった。自ら探してこの目で確認してそれで向こう側への扉をどうすべきか考えようとランフィスは思った。 そして、それは記憶の通りにそこにあった。そこは中央の皇宮から離れている場所。祈りの宮と呼ばれる堂宇(どうう)だった。先々代の皇によって使われていたもので、今は誰も気にも留めない朽ちかけている建物。扉は閉じられ、皇以外の者は誰にも入ることは出来ない。 ランフィスはそこへ何の躊躇なく入る。屋内はただただがらんとしていた。ランフィスはそのがらんとした部屋をコツコツと足音を響かせて歩く。そこに何があるか確信があるかのように部屋の端に行くと、足音が変わる場所があった。そこへ改めて足を静かに乗せる。すると、下へと続く階段がすっと見えた。 その階段へ吸い込まれるように、ランフィスは下へ下へと降りて行った。そこは、地下へと続く階段であった。一段一段降りていくと地下は何故か明るく輝いていた。 最後の段を降り終わり地下のフロアへと降り立つ。そして、その空間を静かに見回すと、中央には水を湛えた泉があった。 「この場所が……」 壁面も天井も白い漆喰のようなつるんとしてどこにも影がなく、高い天井は丸みを帯びてドームのようになっていた。 水をたたえた泉の水面へ何処からか来る光が反射してキラキラと明るく光っており、その光が壁面と天井を輝かせて部屋全体を輝かせていた。 その泉の傍へ行く。 光は上から降り注いでいる。上を見ると吹き抜けのようになっているのか、丁度、その泉の真ん中の真上に上へとつづく空間があり、空が綺麗に見えていた。そこからの光が水面に反射していたのだった。この建物はどういう作りになっていたのか、外からでは、中がこんなようになっているとは到底分からない。 まるで、隠すような、そんな感じに造られている。 "―――その月の光射す真下に立てば・・・・扉が開く" 「ここがそうか……」 ランフィスはそう呟いた。 .

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