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衝動-1

…… ………… ランフィスはそのまま何も言わずに部屋を出る。部屋を出る様子を見せるととたんに空気が変わるのが分かった。 "……これは嫉妬だ" ランフィスには分かっていた。だけど、自らの気持ちは隠しようがない。そう思ってしまったのは止めようがなかった。自分が浅ましいとかそういう思いもある。だけど。止まらない。 (こんな自分が嫉妬に暮れるとは……) そして、かつてここにいた。"彼"を思い出す。 ("彼"もこんな気持ちでいたのだろうか?) ここに幼い頃、連れて来られたとき寂しかった自分と初めて仲良くしてくれた幼馴染。 (彼は私の事を特別な人と思っていてくれた。実際は絶対にパートナーにはなり得ない叶えられないものであると、互いにわかりきっていた。それは当たり前の事だと。だけど、それは、彼にとって、とても残酷な事だった) ランフィスには彼の苦しみと痛みとが今になってわかる。あの時、いかに自分が慢心していたのかと痛感する。 彼は……。 (……私の事を記憶の底から無くして…、心穏やかになって過ごしている。彼を苦しめる記憶はもう無い。彼との思いを知っているのは私だけだ) そして、ランフィスの今は。それが自らへ跳ね返っている。 (分かっている。これは自分の咎で呪詛だ) 自らへかける呪いと同じであると思っていた。 ”だけど、気持ちは抑えられない” ……… ……

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