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向こう側へ2-2

「どうしたの?変な顔して?」 思わず優斗がヤナギに聞いた。 「いや、あの、いつもは天気の事をあまり気にしないので不思議だなって思いまして……」 「……あ、そうだったっけ……?」 優斗は思わず言葉に詰まって (普段と変わらない行動をしないといけないのについついやってしまった) とすこし焦る。 優斗はヤナギに今日の日の事は話していない。もちろん他の誰にも、ビィにだって言っていない。向こう側への道の話は皇のみ知りえる"情報"だからだ。 だけど、 (俺がいなくなったことをどうやってランフィスは皆に説明するのだろう?) と優斗は思う。皇となった今ではあきらかに、問い詰める事などはされないだろう。しかし、 (他の者はともかくとして、あのビィを黙らすのはどうするの?ごまかせるの?) 優斗は何度かランフィスに聞いたがランフィスは"大丈夫"としか言わない。 「優斗は向こう側へ"落ちた"と言っておくから」 優斗を『向こう側へ落ちた』向こう側への『落ち人になった』と言うと。実際はそれが一番ごまかしが効くかと思われるが、それはそれで大変な事になる気がした。 「だから私は、印のひきあいによって優斗を早く戻すとそう皆に言う」 向こう側への道を使って行くので、時と場所はきちんと選べる。そこが落ち人とは違う点なのだが、ただ向こう側への道がある事を知らない者からすれば、落ち人となって向こう側へ行ったと言ってもわからない。 (だからランフィスは大丈夫と言っているのだろうが……) 優斗はそう思った。 …… ……

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