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向こう側へ2-5
………
……
水面がさざめき、その水面に映るのおおきな月もさざめく、そして、真上には大きな月。
そっと泉の端に優斗が立つと風で波立つ水面が再び収まり鎮まる。それは、まるで優斗を待っていたかのようだった。
───その真ん中へ行って、行きたい時と場所を選べば、向こう側への扉が開き道ができる
泉は深くなく、丁度、優斗の膝下までの深さのようだった。
「これでいいの?」と優斗はランフィスを振り返ってみる。
ランフィスは大丈夫というように頷く……。
「ランフィス!」
優斗は突然にランフィスを呼んだ。そして、ランフィスにギュっと抱き着いて、キスをする。
「行くけど。帰るよ!だから俺が行ったらすぐ呼んで!声がとどくと安心する」
「もしも、優斗が戻らなかったなら、私が迎えに行くよ?」
「でも、ランフィスは皇だし、ここにいないと!だから呼んで!!」
そう言って優斗はその月の真下にあたる水面へと静かに静かにと行く。
───その真下へ立つと向こう側への道が開く……
………だが印のある者は・・・……
何故かその後の伝聞の記憶がいきなりランフィスに蘇える。
───だが印のある者は行き来は出来るが稀にその記憶をなくす・・・
「何?どういう事だ」
何故この伝聞を記憶から呼び起こしてなかったのか?
何故この皇の記憶を呼び起こせなかったのか?
その記憶が蘇るのが優斗が向こう側へとまさに行こうというその時であった。
止められない。
水面に映る月の光と真上からの月の光が互いに呼応するかのように、キラキラ光ったかと思うと。
いきなり豪雨と風が起こる。
だけど光はそのままで、その風が渦のように水面を叩きつけたかと思うと。
………泉から優斗は消えた。
その風は泉の上からさらに上へ上へと昇りそして、周囲に広がる。強い風となり、陽の国、そしてその隣の国まで巻き込むように広がった。
………
……
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