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現(うつつ)-9
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記憶の混沌、優斗には未だ少し記憶の曖昧さがあったがそれも徐々にはっきりとしてきた。言葉は戻って来たが他の疾病がある可能性もあると言われて様々な検査を受けた。だけど、何の異常も認められなかった。
医者には優斗の短期間の容姿の変化に対しての原因が分からなかった。
(……こちらと向こうの時間が違うみたいだし。向こうではもうすでに何か月も経っているのに、こちらでは半月ぐらいの時間しか経っていないしな……。そう、なるよね。脳波とかは少し違ったように出るかもしれないとも思ったけれど)
優斗は印の引き合いを感じる力や呼ぶ声を感じる力……そう言った事は医学的には全く分からないんだとも思った。
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一日を検査で過ごした優斗だったが、夕方遅くまで面会時間ぎりぎりになってからも、優斗の父親と母親は病室で待っていた。
他愛もない会話を続けてどんどん言葉の感覚を戻していったが、優斗はこの二人にどうやって自分の事を話せばいいのか考えあぐねていた。
(また会えなくなると言うことはとてもショックを受けるだろうし……)
幾度も幾度も色々考えた末に、優斗は、だけどやっぱり言うべきと思った。
(だって知らないで消えるより、自分は向こう側で無事でいると知ってもらったほうがいいに決まってる)
優斗がそう思った瞬間に。
"………ュゥ……"
両親ではない誰かの声を感じた。屋上の庭園で倒れる前、一瞬聞いた気がしたけれども今度ははっきりと聞こえた。
(ああ、これは呼ぶ声・・・・)
ランフィスの声を感じた。
(そうだ……俺はランフィスのいる場所へ帰らないといけないんだ)
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