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現(うつつ)-10
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優斗は二人に向き直って真剣に言った。
「父さんと母さんには、今から言うことを何も聞かずに、聞いてほしい事があるんだ」
ああ・・・と、優斗の母親は何かを察していた。
優斗が何時にもまして何かそわそわしている様子があった。これは優斗が小さい頃から何か隠したい事やでもそれを言いたい時、どうしていいかわからない時にする、行動。
優斗は気づいていないのかもしれないけど、そういう時ひたすら自分の後頭部を触りまくっていた。今は少し長くなった髪の毛が優斗には触りやすいのか何度も何度も毛先を触っていた。そのしぐさのひとつひとつが何故が今までないような艶やかさを感じた。
自分の子供にそんな感じ方を思うのは不思議だったが、優斗の雰囲気にふと再びまた何処かに行ってしまうのでは?という気がしていた。
だけどそんな事を感じていたのは母親である自分だけで、
(お父さんはそんなことを微塵も感じていないみたいだし)
だから、何かの思い過ごしなのかもしれないと…優斗の母親はそう願った。
病室で話すのはどうかと思って、とりあえず、人気 が無くなった談話室の端へ行き両親と優斗と向き合って座った。
「今から話すことについて、おそらくとても信じてくれない事かもしれないけれども、だけど、何も言わずに聞いて欲しいいんだ」
優斗は息を吸い込んでから、心を落ち着けて覚悟を決めたように静かに話し始めた。
「……俺は、あの路地から別の所へ飛ばされていたんだ……」
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