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逢魔が時-3
「……それに、俺は……ランフィスを……」
……好きだし…離れてはいられない……
そう思うのは"印の所為"なのかそうでないのかは優斗にはどうでもよかった。だけど、それを親に言うのは何か恥ずかしい。もちろん、ランフィスと自分が"気を生み出す方法"をはっきりとは言えるはずはない。
だけど、きっと何か察していると優斗は感じていた。特に……
(母さんは"分かって"いるかも。さっきから父さんしか話さないのはきっと母さんが何かわかっているから……だろうな)
そう思っていた。
「”帰る”…か…そうか……」
父親の表情は険しくなっていたが口調はとても静かだった。
「……一度戻って父さんとお母さんに会いたかったんだ。このまま俺が何処にいるかわからないのは父さん母さんに申し訳ないと思ってた。俺は向こう側にいる。向こう側で元気に暮らしているからって伝えたかったんだ」
他に何か伝えることはないかと優斗は一生懸命、考える。だけど、何も言えなくて黙ってしまった。それは優斗の両親も同じで、たがいに向かい合って黙りこくっていた。
ただそのまま静かに座る時間だけが過ぎていた。
談話室には大きな窓があったが日が沈みかかって薄暗くなってきていた。優斗はその窓の外と部屋の中の薄暗さにふと気が付く。
(ああ、逢魔が時だ)
これは最初に優斗が向こう側へ行った時と同じ時間の頃であった。優斗はその時の事を思い出す。
(もし、今ランフィスがこちら側へ来れたなら……)
さっき病室で優斗が聞いた声はランフィスだった。
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