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逢魔が時-8
………
……
残された優斗の父親と母親は暫くの間呆然としていた。
「……優斗は本当にここにいたのですよね?」
やっと母親の方が口を開く、なんだか優斗が行方不明になってから見つかった事がそれがまるで嘘だったかのような出来事だった。
(彼が優斗が話していたランフィスなの……?)
両親は優斗がランフィスとともに突然消えた事をそのまま入院している病院へ言うわけにもいかず、どう説明していいものか困窮して、詳細をごまかしながら、ただただ再び優斗が何処かへ消えて行ってしまったとしか言うしかなかった。
優斗は再び行方不明人となってしまった。
行方が分からなくなった優斗が突然、現れたこと自体が幻だったかのようだった。だけど、今は父と母だけは、優斗の居場所を分かっていた。
両親は家へ帰っても2人ぼんやりとしてしまっていたが、ソファーにゆっくりと座っているうちに2人とも徐々に落ち着きはじめた。
この世界で突然行方不明となってしまった何人かは向こう側の世界へ行ってしまっているのかもしれない。でもそんな都市伝説めいたことは普通には信じられない話であって。自分たちは本人からはっきりと伝えられた分はよかったのかもしれない……と、父親と母親はそう少しづつ話し合った。しかも目の前で見せられた。
「だけど、また会えることはできないの?」
母親は思わず呟いた。
あれが幻ではなく、本当の出来事だったというのは、家へとそのまま持ってきて、ダイニングテーブルの上へぼんと置いてそのままになっていた『琥珀色の石』がそれが事実であったと物語っている。
それを観る余裕ができた今、果たしてこれでどうやって、映像を見るのだろうか?と、母親がその石があるテーブルへ立ち上がって近づいていった。そして、おもむろにそっと石を触ると突然その上へ映像がでて来た。
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