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狭間の-1

… ……… 時空の歪み。 時と空間がそこにあるけれども無い場所。 向こう側へ行く……本来ならすぐに通ってしまうはず、その途中でランフィスと優斗の前へ突然に不審な影が現れた。 「ギオ!?」 それは、消えたはずのギオだった。驚いた優斗はランフィスの腕をギュッと掴む。 「ギオ!!さっき斬り捨てたばかりなのに…」 ランフィスは目の前に現れたギオに声を荒げる。 「さっきのは影で俺の先触れだって、分かっていただろう?」 「……斬り捨ててもこんなに早くに来たとは…」 影を先へ付けるのは影を伝って自らを現すという定石であった。だからこそ、ランフィスは一刻も早くその場から優斗を連れて離れたかったのだった。 ただ、その影を斬られたギオは本体……実際の身体にもダメージを負ってしまっているようだった。ギオはそのダメージのせいか身体が揺らぎその場へ倒れ込みそうになる。この場所に長時間留まるのはそのまま時空の歪みに出来た狭間へ飲み込まれてしまうことになる。 「くそっ!」 ギオは倒れながらとっさに、ランフィスの身体をつかみ取る。ランフィスもぐらつくが、傍にいる優斗へ害が及ばないように必死に堪える。 「……離せ!」 ランフィスはギオが掴んだ手を外そうとするが、 「いや、諸共(もろとも)だよ?」 そのままぐいっと引っ張ったと思うと、2人とも雪崩のように崩れ落ちる。ランフィスとギオの2人は時空の歪みに出来た狭間の黒い空間へ飲み込まれるように落ちて行く……。 咄嗟にランフィスは優斗が巻き込まれないように出来得る限り遠くへと突き飛ばす。 「え?ランフィスっ?!!!」 優斗は黒い空間へ飲み込まれる2人を見て叫んだが、その出来事があまりにも早い展開で起こったので優斗は何が起こっていたのか分からなかった。 ………… ……… …

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