334 / 379

風-1

…… ……… ………… 「今宵、風が吹きます……」 ジマはそうギオに言う。 ……… …… それは、ジマが久々に視た夢見で分かったことだった。 ジマが時の変化が視えたのは久々だった。こちらの世界に来てからは全く見る事は無かった。睡眠によって見る普通の夢ではなく、所謂、白昼夢というやつだ。ジマはいつも突然、降ってきたようにそれを視る。 そして、ひと月ほど前の事ジマは夢見をした。 元の世界では能力者、異能力者と言われていたジマは、その能力を色々な人へ助力などしてそれを生業にもしていた。夢見もその能力のうちのひとつだ。そう言った事での名は知られてはいたが、世間的には大っぴらにはなってはいず、知る人ぞ知るという位置だった。 こちらの世界に来てからは魔導士として、その能力を違和感なく発揮出来ていた。 (厳密にいえばこちらの世界の魔道の力とも少し違うのですが……) ジマは何かを思い出すかのように遠い目をする。 (とかく、あちら側の世界は、こういった他者と違う能力を持っている者はいずらいものだった。だから、私にはこちら側の世界のほうが合っている。元の名前も捨ててしまいましたし。私はもう二度とあちらの世界には戻りたくはない……) ……… …… .

ともだちにシェアしよう!