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夢見-3

……… …… 書物は、封印が解かれて恐れる事もなくなったのだったが、知り合いは怖がって結局、ジマに書物を託したのだった。 その書物をここではない世界から、人探しに来ていると言っていたその人に試しに読んでもらおうとした。 その人の名は、たしかバレスと言った。忘れていた名も思い出した。容姿もはっきりと思い出す。黒い髪の緑の瞳の見目好い人だった。 ───"読んでもらう" ジマにとっては、それはほんの、思いつきだった。だけど、それは、もしかしたならば、思いつきではなかったのかもしれない。 …… …… そして、その彼……バレスが書物を手に取って表紙を見た。その表紙に書かれている文字を見るなり、 驚いたように言った。 「これは、私達の世界の国の言葉で書かれたものです。これを何処で見つけたのですか?」 彼はそれを読むことが出来た。その文字は彼の世界の言葉であった。 ジマは何故かその様子を見ても驚くことはなく"やっぱり"と思ってしまった。それは、可笑しな話だった。 ジマにはそれが彼には読めると何やら確信があった。おそらく分かっていたのかもしれない。夢見ではなく何処か予感めいたなにかだった。 「 ……これは、知り合いの伝手である古民家の蔵で引き取って欲しいと頼まれましたものです。昔、ある高名な陰陽師が残したものだそうです。しかしながら、これは陰陽道で使われる文字ではありませんでした」 ジマはこの書物を手に入れた経緯を話した。 「陰陽師……?」 彼にとっては聞きなれない単語だったのかもしれない。ジマはもっと分かりやすく説明をした。 「陰陽師…昔いたのですが。占い師とはまた違いますが、そういったこともやっていたものです。聞くところによれば呪術などもやっていたと聞き及びます」 .

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