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夢見-5

「それは私には見えないものなのでしょうか?」 思わずジマは聞き返す。 「これは、同じ印を持つもの同士か、ある一定以上の力を持つ者でしか見れません。おそらく見る事は出来ないと思います……」 「……力を持つ者……?ですか?あの、試しに私に見せていただいてもよろしいですか?」 「よろしいですが……」 彼はそう言って、少し長い肩まである黒い綺麗な髪をかきあげて、後ろのうなじあたりを見せた。 「ここにあるはずです」 見えないと言われていたのだったが、だけど、ジマには見えていた。 「 星。 星の模様ですか?」 「……見えた?と?」 驚いてバレスが聞き返した。ジマは静かに頷く。 「あなたはもしや、魔導士なのですか?力の強い者なら見える。この世界で見えるものがいるとは・・・」 そして、バレスはその書物の最後になにか絵図が書いてあるのを指し示した。 「これが印です。私と、あと私の探している人の」 そして、それは明らかに今見た、星の模様。 「これが印というものですか?この文書に描かれていたのを今はじめて気が付きました」 ジマは封印を解いた後、書物を開いて見て見たが、読めない文字で書かれていることもあってあまり詳しくは見てはいなかった。最後のほうにそのような絵図があったような気もしたが……。 おそらく文字が読めて初めてその絵図の意味が分かるもの。文字が読めなければきっと見過ごしてしまう。 その絵図は星の模様の位置が描かれていた。 ひとつは腕の付け根。 ひとつは首の後ろ。 書物は、これを書いた者に印があった事、その印が消えた事、この印の消える条件等々、詳しく書き記していた。 「……彼はもう印が無いのですね……」 とても悲しそうにバレスは言った。 書物の作者の名前は"ビィ"そう書き記してあった。 「ビィは私がさがしている人です」 そして、突然バレスは、 「……こんなに、お世話になったのに申し訳ありませんが。これ以上は私達の世界の事に関わる事です、だから、今までの事を忘れて下さい………」 そう言って、白い靄の中に隠れていってしまった。 ……… …… それが、彼の事。 ジマは夢見をするまで、彼の事をすっかり忘れていた。 …… … .

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