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帰郷-5

これが正しいかどうかは分からないが、何か自分にしか出来ない事なのだろうと、そう思ったジマはギオを探しに向こう側とこちら側への行く道の狭間の空間……落ちたと言う時空の狭間を見つけることにする。 そうして、ジマは誰にも見つからずに、あの泉へ行くことが出来た。 夢見で視た場所は旋風が起こった時に崩れてしまっていたが、そこがそうだと分かった。 この瓦礫の下にあの泉が隠されている。 真っ暗な透明な空。その空には綺麗な満月が浮いていた。 今日の天気は雲一つない空だった。 その瓦礫から覗いている泉。 ジマが泉を見つけると、その満月が丁度、きれいに水面に映っていた。 丁度良い位置に。 水面は波立たずに、それはまるでジマを待っていたかのように静かにあった。そして、ジマはそこへ吸い込まれていった。 一瞬、波立つが、ジマがそこにいたという事実が嘘みたいに無くなっていた。 そこには鏡のような水面があるだけだった。 ジマは何処へ行ったのかは分からない。 ジマは向こう側へと行ったのだろうか? それは、ジマにとっては向こう側へ"行った"のではなく"帰郷した"という事なのかもしれない そして、静寂。 その時間がどのぐらいか経ったのか。 不意に、ごおっという地鳴りが起こる。と同時に地面がうねるように揺らぐ。 空には異様な光の粒が流れていた。 泉のあるあの祈りの宮へ大きななにかが降り落ち、爆発音がして燃える。 あの泉とともに。 ……… … .

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