353 / 379
一時の安らぎ-2
ランフィスは優斗の傍にはいなかった。
こんなにも日が高いのでとっくに起きて執務室へ行っているのだろう。
(ランフィスは戻って来てすぐにそんな、仕事をしてしまうなんて……)
だけど、ランフィスが向こう側へ行ってそして戻って来たのは、こちら側の時間的には僅かだった。ランフィスの不在を気が付いた者は殆どいなかった。だから、ランフィスが戻って来てすぐに通常業務を行うのは当たり前といえばそうだった。
だけど、優斗は、やっとの事で戻って来たその安心感で、気が抜けたようになっていた。ふと、日の光が窓から入っているのに気が付いて、ベッドから起き上がって日の光を浴びようかと窓の側へそろそろと歩いた。
(よく日の光を浴びれば目が覚めるっていうじゃない?)
「あれ?でも、それって"朝日"だったかも?今はもう昼近くだよ……」
優斗は思わず苦笑いをしてしまった。
………
………
その日の午後は、久々に猫になったヤナギと庭でゆっくりしようかなと優斗は思った。
「猫のヤナギ。ネコヤナギだね?」
ひとしれずふふと笑ってしまう。
猫のしっぽみたいなふわふわした花をつける木。
こちらにはないかもしれない。
そして、優斗は猫になったヤナギにふと、聞いてみた。
「ネコヤナギっていう木はこっちにあるの?」
(ネコヤナギ?って?)
ヤナギが心話で聞き返す。
「やっぱり、こっちにはないのかな?ヤナギのしっぽみたいなのが生えている木なんだ」
久々にもふもふの毛並みを触ってのんびりと過ごせる事に優斗はとても嬉しかった。
(ふーん?)
そう心話で返事をしたヤナギも、
"みゃあ"
と鳴いてごろごろと喉を鳴らしてやはり嬉しそうだった。
そして、
………暫くしてから、優斗はヤナギに式鬼(しき)を頼んだ。
元々、魔力というか妖力を持っていたヤナギは、ビィの元である程度の式鬼(しき)を扱えるようになっていたのだった。その式鬼を飛ばすのは
密かにジマへギオの事を知らせる為だった。
ともだちにシェアしよう!