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使者-3
そして、ビィ宛てにも別に手紙が届けられた。
その手紙も優斗と同じようにこちらの言葉ではなく、日本語で書かれていた。
それはビィが日本語を分かると知っていたからだった。
「何故ジマが私に?」
ジマの意図が分からなかったビィは一人静かにその手紙を読んだ。
そして読み終わっても、しばらく空を見つめていた。
(日本語。懐かしい文字。もう読み方も忘れてしまっていました。やはりジマは、向こう側で私が書いた書物を見たのですね。まさかあの封印を解くとは・・・それを解読したのがあの方"バレス"様だとは………あの方は、いらしていたんですね……)
「何故、この手紙が向こう側の日本語で書かれているのかがわかりましたよ」
ビィはそっと呟いた。
それは、その内容が陽の国の内情的に他に知れたらおそらく大事になると思ってのことだろう。
「……何故、今さらながら気を使うのか。全くジマと言う人はわからないですね」
(バレス様の事は別に嫌ではなかったけれども、私が皇のパートナーとなるには私は魔導士を捨てなければいけなかった)
そんな時、ビィは、突然、向こう側への落ち人となった。
(バレス様が向こう側へ行ったことも知らなかった。記憶も無くなっていましたし。印も消えていた。そして私がこちら側へ戻って来た時にはすでに時代が過ぎて、あの方はもういませんでした…二度と会う事もなく)
ビィは読み終わった手紙を手元の机に置く。
(……ここで悲しむ涙も出せばいいんでしょうけれども。そんな涙も出ない程に昔の話になってしまいました……)
そして、そのまま窓の側へ行って雲一つない空を見つめ、はるか昔にいた人の事を思う。
………
……
…
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