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声-1

…… ……… ………… そこは、 長い長いトンネルのようなところだった。 だけど、暗くない。 天井は明るくて白くてて、つるつるしてるような。 その真ん中に優斗は、ぼんやりと突っ立っていた。 「……?あれ?どうしたんだっけ?俺、たしか……」 思い出せない。どうしていいかわからないままに、とぼとぼと歩く。 (立ったまま気を失っていた?) そこを、抜けるとなにかドームのようなまるい天井の部屋にいた。 そこもとてつもなく真っ白く。だけど空が見えた。 そこで、 誰かの声を聞いた。 「……あれ?」 なんだろうと優斗はキョロキョロする。 それは女性のような男性のような、性別のよくわからない声。 ”……ユウト” 今度ははっきりと聞こえた。そして続いて声がする。 "こんにちは、ユウト!" ”私たちの声が聞こえますか?” 『私たち』と言っているそれは、なにか複数の声が重なっているような声で、次々に優斗に話しかけて来た。 続けてひとつの声が話す。 "あなたは私たちにとって稀代な存在です" 「───稀代?」 優斗は聞き返す。 また違った声が答える。 "そう、あなたと今の皇との間においては、たとえ印の存在が無くなってもその絆は消えない" 「──?どういうこと?」 "この世で、気をうみだすことのできる、皇とそのパートナーは互いの印でもってその存在意義のあるもの" "だけど、印がなくてもその互いにその絆が残り、永遠にこの世に気をうみだすことのできる存在であるということ" "それは、とても稀なこと" 声が立ち代わり次々に話す。 ……おそらくよほど互いを互いをより必要としているということ ……そして、互いの愛情が深く深く絡んでいる ……だからそれが印が無くなっても絆は消えないんだよ "だから特別なんだよ?" "だからあなたは、誇っても良い" 「だってこの世にあなたはとても大切な存在になるから」 最後のその声は一番優しい声であった。 「あなたは……あなたたちは誰なんですか?」 優斗は思わず聞き返す。 『…………この世においては皆、我を神と呼ぶ』 一人の声がした。今までの声たちとは違った、りんとした強い声だった。 .

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