366 / 379
声-1
……
………
…………
そこは、
長い長いトンネルのようなところだった。
だけど、暗くない。
天井は明るくて白くてて、つるつるしてるような。
その真ん中に優斗は、ぼんやりと突っ立っていた。
「……?あれ?どうしたんだっけ?俺、たしか……」
思い出せない。どうしていいかわからないままに、とぼとぼと歩く。
(立ったまま気を失っていた?)
そこを、抜けるとなにかドームのようなまるい天井の部屋にいた。
そこもとてつもなく真っ白く。だけど空が見えた。
そこで、
誰かの声を聞いた。
「……あれ?」
なんだろうと優斗はキョロキョロする。
それは女性のような男性のような、性別のよくわからない声。
”……ユウト”
今度ははっきりと聞こえた。そして続いて声がする。
"こんにちは、ユウト!"
”私たちの声が聞こえますか?”
『私たち』と言っているそれは、なにか複数の声が重なっているような声で、次々に優斗に話しかけて来た。
続けてひとつの声が話す。
"あなたは私たちにとって稀代な存在です"
「───稀代?」
優斗は聞き返す。
また違った声が答える。
"そう、あなたと今の皇との間においては、たとえ印の存在が無くなってもその絆は消えない"
「──?どういうこと?」
"この世で、気をうみだすことのできる、皇とそのパートナーは互いの印でもってその存在意義のあるもの"
"だけど、印がなくてもその互いにその絆が残り、永遠にこの世に気をうみだすことのできる存在であるということ"
"それは、とても稀なこと"
声が立ち代わり次々に話す。
……おそらくよほど互いを互いをより必要としているということ
……そして、互いの愛情が深く深く絡んでいる
……だからそれが印が無くなっても絆は消えないんだよ
"だから特別なんだよ?"
"だからあなたは、誇っても良い"
「だってこの世にあなたはとても大切な存在になるから」
最後のその声は一番優しい声であった。
「あなたは……あなたたちは誰なんですか?」
優斗は思わず聞き返す。
『…………この世においては皆、我を神と呼ぶ』
一人の声がした。今までの声たちとは違った、りんとした強い声だった。
.
ともだちにシェアしよう!