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神々しいもの-1
…
………
檀上の雄姿を大陸中が見ている中でランフィスは皆へ語りはじめる。
声は皆に一様に届くように施されていた。
凛とした声が響き渡る。
『この大地と皆の為にこの"気の力"が在り、この気の力のおかげで私が在ります。
気の力はユウトなしでは得られません
ユウトとの気の力は今までの皇達の気の力とは違います』
次々と放つ言葉。
『──そして…』
そこで、言葉を一旦切ったランフィスは壇上から後ろの優斗の方へ向いた。
そうして、優斗にだけ聞こえるような小さい声を出す。
"………ユウト来て"
呼ばれるなんて全く思っても見なかった優斗は、
「え?」
突然呼ばれて吃驚して暫く固まった。
(来てってどういう事?いいの?皇と檀上へ一緒に上がるのは、それは、だめなんじゃ・・)
頭の中でいろいろぐるぐると考えてしまう。
「……いいから、私の所へおいで?」
そう言うランフィスはにっこり微笑んで優斗へ向かって手を差し伸べる。
側にいた侍従に促されて優斗は恐る恐るそっとランフィスへいる壇上へ歩み始める。
すると、ランフィスは、待ちきれないとばかりに自分から優斗へ近づいて行き、ぐっと手を掴んで檀上へと上げた。
『ユウトは特別です。だからユウトとの気の力は』
そう皆へ向かって語った。と思ったら、側まで来た優斗をぐっと抱き寄せてその唇へ口付けた。
(……え…)
優斗は突然の謁見台の上の見晴らしに狼狽えていて、何が起こったのか全く分からなかった。
───お披露目の時にもこのような事はしなかった。
今までの皇とパートナーも、皆の目前にすることはなかった。
だけど、ランフィスは何でもないかのようだった。そして、
『ユウトは特別で、私は誰よりも……』
そっと唇への口付けを止めてから、優斗にだけ聞こえるような囁く声で言う。
"……愛おしい人だ……"
優斗は暫く固まったままでいたけれども、
"なんで、ここで、今、キスするの?"
と、言い返す。その否定な言葉とは裏腹に、ぎゅっとランフィスに抱き付いた。
そしてもう一度、今度は深く、深く口付けを交わす。
(俺もランフィスが好きだしだれよりも好きだし……それから愛してる)
声にならない声で言う。
それは長い長い口付けだった。
目の前がちかちかして優斗は、息が出来ないかと思うほどだった。
すると
突然に身体からあふれ出る。
──気の塊 。
"え?キスでも気の塊が生まれるの?"
そう思った瞬間。優斗の目の前が物凄く眩しくなり目がくらむ。そうして、辺りは真っ白になる。
その真っ白な眩む光はそのまま、
それは気の力が生みだされるさま、それをランフィスが自らに受けそして、
同時にランフィスが、手を天に仰ぎ、放つのは……眩いばかりの輝く光の球の束。これは気の放出。
それを皆にこの地に放った。その光はとても
──神々しい。
実際に気の力を放出する姿を民衆へ見せるのは初めてであった。
その光にあてられたかのように皆、呆けたように見とれてしまっていた。
……
……
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