9 / 63
第9話
「変態なんだろ?こうやって、誰のでもしゃぶってんだ?」
「ちがっ、だって、必要だから、ああっ!?」
歯を立てられて尖った乳首を、イジワルするみたいに弾かれて、勝手に腰が浮いてしまう。痛いようなむず痒いような、でもなんとなく気持ちよさも感じてきてしまっている自分が情けない。
つか、乳首って気持ちいいんだなぁ。不思議だ。
「男のちんこしゃぶるのが必要って、お前噂通りの淫乱なんだ?」
「ちがう!いや、ぁ、やめて…触んな!」
「とか言ってるけどさぁ、美夜のここおっきくなってるぜ」
「ひゃあっ!?」
飯田の手が、容赦なくズボンとパンツの中へ侵入する。そのまま、先走りでグチュグチュになった俺のをぎゅうっと握った。
「も、やぁ…いた、い」
「痛い?ああ、そう。いつもは優しくされてんだ?でもさぁ、痛いのも気持ちいいって知ってる?オレはそっちのほうが燃えるんだよなぁ」
一体何を言ってんだ?痛いのがいいわけないだろ!!
そもそもの問題として、人に触られんの自体初めてだっつーの!!
だけど、飯田はそんなこと考えもしていないのか、一気に俺のズボンと下着を取り去ると、グチュグチュと卑猥な音を立てて乱暴に扱いた。
「い"、ひぁ、う、ィタァ…ッ」
強引な快楽は、徐々に俺の思考を奪っていく。
相変わらず舐められている乳首も、激しいだけの手の動きも、ただただ俺の理性を奪っていく。
「痛いのイヤなんじゃなかった?めっちゃよさそだけど」
飯田はなおもイジワルなことを言いながら、手を止める気配はない。それどころか、俺のちんこの先っちょを、親指でグリグリと抉り出す。
「ひ、ぁああっ!?い、たぁ…んんんっ!!」
ビュルルと精液が飛び出す。ひとたまりもなかった。自分の意思とは関係なく、無理矢理絶頂へと追いやられたような気分だった。
もうダメだ。なんも考えらんない。何がどうなって、こんなことになってんの?
なかば放心状態で便器にもたれかかる俺だけど、そんな俺に飯田は全然優しくなかった。いつもの気遣いのできる飯田は、いったいどこへ?
「優しいだけのセックスってつまんねぇよな?どうせやるなら、意識飛ぶくらい気持ちいいほうがいいじゃん?」
「は…?」
「美夜は慣れてるだろうからさ、遠慮なくいくぜ」
「ちょ、え?なに?」
飯田の目が、まるで猛禽類のように光った。獲物を前にした猛禽類だ。そうなると俺は、逃げ場を失った小動物だ。
飯田が俺の足を掴んだ。両膝を抱えるようにして、俺の恥ずかしいところを曝け出す。
「や、めっ!そんなとこ見るな!」
「うっせえな、じっとしてろ!」
「やだやだ触んな!やめ、も、ホントやめろっ、てぇ、ヒぅ」
無防備な尻の穴に、飯田の指がそっと触れる。ヌルヌルしているのは多分、俺の出した精液のせいだ。
「ゃ、ああっ!抜いてっ、抜いてぇ!!」
「黙れって。お前それ煽ってんのと一緒だから」
「あおってな、い!マジでやめ、ん、ぁ…」
「ヤりまくってるわりにキツイじゃん、ここ。もしかして久しぶりだった?」
「してない…そんな、触んなぁ」
飯田の指が内壁を引っ掻くのがわかる。気持ち悪い。無意識に涙が溢れてくる。それを、飯田は嗜虐的な笑みを浮かべて、ただ見下ろしている。
「オレさ、結構無理矢理すんの好きなんだよね……だからさ、ちょっと我慢しろよ」
ニタリと歪んだ笑みだった。俺は恐怖に息を飲む。
その直後だ。硬くて熱いものが、尻の穴にあたった。指が入っていた俺のそこは、小さく開閉を繰り返していて、まるでその硬いものを飲み込もうとしているみたいだった。
「あ"あ"あ"あ"ッ」
あまりの痛さと圧迫感に息が詰まる。内側から押し出された内臓が口から出そうだ。押し戻そうと下腹部に力を入れると、逆に奥まで飲み込んでしまうのが不快でたまらない。
「キッツ…、もうちょい穴緩めろよ」
「ヒャウっ、い、たぁ……」
バチンと尻を叩かれて、慌てて力をぬこうと必死なる。でもどうしていいかわらかなくて、ただ息が苦しくなっていく。
酸欠で頭がボーッとしてきた。もうダメだ。このまま死ぬんだ。なんて考え始めた頃、飯田が腰をグリッと押しつけて言った。
「全部入ったぜ」
「や、抜いてっ、くるし、い」
「それはムリ。つかさ、嫌がってばっかじゃなくて、お前もいつもやってるみたいに鳴けよ」
「やっ、てな、い…知らない…も、やめて」
涙が止まらなくて前が見えない。飯田がどんな顔をしているかもわからない。でも、結果的に見えなくて良かったかも。
いつもの優しい飯田は、今はいないのだ。
「んぐ、ぁ、はっ、い"、ああっ!?」
それは突然だった。必死で息をすることに集中していた俺に、まるで容赦のない動きで飯田が腰を打ち付ける。
俺の都合なんてまるで無視で、ひたすら奥へ奥へと腰を振る。肌がぶつかるバチンバチンという音だけが俺の耳に響いた。
「ぁ、ぅぐ、ふ、ガハッ」
こんなの、全然気持ちよくない。俺の思ってたセックスと違う。つか、俺なんで飯田に掘られてんの?
もうやだぁ、と泣き言を言いそうになった。が、その時ビリビリと身体を走り抜けた刺激に、一瞬で頭が真っ白になった。
「ひぁ!?な、なに?」
驚いて上体を起こす。視線の先に、ガチガチに反り返った自分のちんこが見えた。ダラダラとはしたなく先走りを垂れ流し、腹について糸を伸ばしている。
「美夜のイイトコロみつけた」
「え?ちょ、アアッ!?そ、そこやめ、ヒッ、ッッッ!!」
「気持ちいい?なぁ?無理矢理されて、ケツん中かき回されて、前立腺責められて気持ちいい?いいんだろ?言えよホラ、気持ちいいって言えよ!」
飯田が不規則に動く。浅い所と、奥を緩く責める。
痛くて苦しかったものが、だんだん違う感覚を覚え始める。そうなると、俺の血は厄介だった。
淫魔の血は、欲求に忠実で、俺はそれに簡単に流されてしまう。
「ぁう、きも、ちぃ…あっ、そこ、あさいとこ、ついて!ヒッ、あ、いいよ、きもちいいっ!」
気付いた時には遅かった。俺は、はしたなくヨダレを垂らしながら、飯田の背に回した腕に力を込めて必死に縋り付いていた。
「アアッ、すごぉ!いいだの、おくきてるっ、うぁ、ああ…きもちいいっ、でちゃう、でちゃう!!」
「エロ…なあ、おもっきり出してるとこ見せて」
ニタニタと笑うイジワルな瞳に。
痛いほど打ちつけてくる腰の動きに。
思考が弾けて真っ白になる。
「ん、はぁっ、あ、ああっ、イくイく、も、ああああっ!!」
ビュクビュクと勢いよく精液を吐き出した。それは俺の腹を濡らし、びっくりするぐらい飛び散った。
ついで腹の中に熱を感じた。飯田が俺の中に吐き出したんだとわかった。
「ん、ふ……」
ずるりと抜けていく感覚。それを追うように、尻の間をヌメヌメしたものが伝う。
しばらく、お互いの荒い息遣いだけが響いていた。独特の脱力感に、ともすれば意識を持っていかれそうだった。
「あ、のさ…ごめん」
先に口を開いのは飯田の方だった。顔を上げて見ると、申し訳なさそうな表情をしていた。そそくさと自分のものをしまって、所在なげに視線を彷徨わせている。
「飯田って、そんなキャラだった…?」
俺がそう言うと、飯田は両手で顔を覆った。耳まで真っ赤だった。
「それは言わないで!!オレ、興奮すると我をわすれちゃって…ごめんな?怖かったよな?」
「まあ、うん。怖かったけど……」
それより自分の痴態の方が気になる。俺なんて言ってた?めっちゃ変態っぽいこと言ってたよな?
「美夜ってさ…ちょっと、変態、」
「違う!!」
「でもなんか、AVみたいな、」
「違う!!」
ああ、なんてこった。
「「はあ……」」
俺たちは、同時にため息を吐き出した。
ともだちにシェアしよう!