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第16話

「あ、やぁっ、んふ、ぅん"」  ザラザラと砂っぽい床に跪かされて、髪を掴んで無理矢理フェラさせられているというのに、俺の舌はそれを美味しいと感じてしまう。  先輩のは、どこかフルーティな甘さがあった。  行為自体は嫌々なのに、俺の体はそれをすぐに受け入れてしまう。  美味しい。もっと、もっと欲しい。  そんな感情に、どうしたって抗えなくなっていく。 「んぶ、ふ、んぅ…」 「ホントお前、美味しそうにしゃぶるよな」  生理的な涙に濡れた瞼を撫でて、先輩が嬉しそうに笑う。  本当はイヤなんだ。でもさ、俺にとってこの欲求は、眠たいとかお腹すいたとか、それと同じなんだよ。 「ふぁ、先輩の、あまぁい…」  一度耐え忍んだ欲求が再び顔を出す時、どうにもならないくらい暴走してしまうのだ。 「ん、おいひ…せんぱいのおいひぃ」  嫌々だったはずなんだけど、いつのまにか自ら吸い付いていた。先輩のものを口いっぱいに頬張って、形をなぞるように舌を這わせ、少しもこぼさないようにと受け入れる。  先走りの汁を啜り、いつもみたく舌を動かして、ん?と違和感を覚えた。  誰のだって甘くて美味しいと思っていた。そりゃ人によって味は多少違ったりもするけど。でも、気にならない程度の違いだったのに、なんだか物足りない。  そんなこと、初めて思った。 「オラ、もっと喉まで入れろよ」 「んぐっ、ぉえ、ゴフッ」  そういえば。  飯田のはもっと甘かった。脳みそが蕩けてしまいそうなほど甘くて、濃厚で、例えばちょっとお高いチョコレートみたいな、そんな感じだった。  あんなのは初めてだ。俺は同じ人のをもう一度欲しいと思ったことがない。当然、真っ最中に比べたこともなかった。  その違いとして、飯田とはセックスしてしまっていることに思い至る。だからあの時のことを鮮明に覚えていて、味も思い出せるのかもしれない。  とか考えていたせいだと思うけど、この時、俺はいつもより興奮していた。先輩のを咥えながら、飯田とのセックスを思い出してしまっていた。 「善岡さぁ、ホントちんこ好きなんだな。舐めながらおったててやんの」 「ふぇ…あっ!?」  誰かが、俺の股間をズボンの上から鷲掴みにした。自分でも気付いていなかったそこは、明らかに大きく育っていた。 「舐めてるだけで興奮した?喉の奥あてられて、気持ちよくなっちゃった?」 「ちが、ぁあっ!」  否定の言葉を言い切る前に、先輩が俺の体を押し倒した。慌てて抵抗しようとするも、四対一で敵うはずもなく、腕も足も押さえ込まれてしまう。 「い、たっ!離せ!やめろって!」 「暴れんな」 「痛いのはイヤだろ?」  カチャカチャとデニムのベルトを外す音。続いて、乱暴に剥ぎ取られたデニムと下着。驚きと恐怖が沸き起こる。  先輩がニヤニヤと笑みを浮かべて言った。 「嫌がってるわりに、しっかり勃ってんじゃん」 「ッ、だ、だって…」  この乱暴な行為に、飯田を重ねているなんて。あの時のものすごい快感を思い出しているなんて。  俺の淫魔の血は、どうやらちゃっかりしているようだ。もっとちょうだい、きもちいいこと、もっと、ちょうだいと、快楽ばかりを考えている自分が確かにいる。  あれ……?  俺が欲しいのって、美味しいのだっけ?気持ちいいのだっけ? 「つかさぁ、普段からヤリまくってんの?スゲェ痕ついてんだけど」  誰かが俺の足を割開いて言った。飯田に付けられたであろう赤紫の鬱血痕は、一週間経っても少し残っている。 「見ないでぇ!」 「見ないでって言われると見たくなるんだよなぁ。男ってそういう生き物だから」  先輩たちの手が遠慮なく上半身を弄る。あっという間に上も脱がされて、恥ずかしい格好で転がされてしまった。  部室内のベンチに引っ張りあげられ、そこに手をつくと、先輩のひとりが俺の顔に硬く勃起したちんこを擦り付け、その匂いに体が反応する。  もし精液がイヤな味だったら、俺はもっと悲観的に生きていたと思う。どうしたってイヤなものはイヤだから。  でも幸い?なことに、淫魔の血は精液をまるで、お菓子のような甘美なものだと感じさせる。抗い難い魅惑的な甘いお菓子。そんなもの、お腹の空いた子どもの前に出せばひとたまりもない。  俺はまさに子どもみたいに、必死になってその甘い誘惑にしゃぶりつく。 「んぁ、は、おいひぃよぅっ」 「ドスケベじゃん、コイツ」 「そうだろ?おれも最初ビックリしたわ」 「しかも女よりキレイな顔してやんの」 「でも女よりエロいよな。こんなことされて、喜ぶ女はなかなかいない」  女と比較されて、普段なら怒るところだったけど、もはやそれどころじゃない。どうしたらもっと、たくさんおいしいのをくれるか、そればかり考えてしまう。  先輩のひとりが、俺の尻を優しく撫でる。その手が、ゆっくり移動して、突き出した尻の割れ目を乱暴に拡げた。敏感なところが外気に晒されて、ビクッと腰が揺れる。 「ケツ振ってねだってんの?ここ、開いたり閉じたりしてエロいよ」 「やぁぁ、はずかし……」 「恥ずかしいと思ってる奴はちんこしゃぶって勃ったりしないだろ」  尻に冷たい感触があった。ヌルヌルした液体が肌を伝う。そんな感覚にもなんだかゾワゾワした快感がある。 「痛くないようにしてやるからな」 「優しいだろ、おれら」  だから、と先輩たちは笑う。 「大人しくしてろよ」  ズブリと、先輩が尻に指を入れたのがわかった。 「ひ、ぁっ!?」 「おーい、こっち、忘れてんぞ」 「んんっ、んぶ、ふ、ぅ」  再び口腔を埋められ、またもその甘さに脳みそが蕩けそうになる。  尻に感じる違和感も、だんだん気にならなくなってくる。 「善岡は無理矢理されるの好きなんだ。可愛い顔して、淫乱なんだ?」 「もう挿れていいよな?欲しそうだし」  やめろ、と心では叫んでいた。でも、はやくはやくと思う淫魔の自分が期待に目を輝かせている。 「ん"ん"ん"っ!」  無理矢理体を裂かれるような圧迫感に、またも内臓が口から飛び出しそうだと思った。息が詰まって、涙が勝手に頬をこぼれ落ちる。こっちの都合なんて全く考慮せず、先輩は一気に奥まで貫いた。  痛みが無かったことが幸いだったが、それは結局、この行為に慣れつつあるということだ。悲しいかな俺の体は、着実に快感を拾うように変わりつつあるのだ。 「ぁっ、せん、ぱいのっ!ふといよぉ!」  狭い尻の穴を、本来は出すためにあるはずの穴を先輩のがミチミチと無理矢理拡げている。想像するともうダメだった。 「きもちい、よぉ!せんぱ、もっと、おくも来てぇ!!」  何言ってんだ?と、まだ冷静な俺は思った。だけどこうなったら止まらないことを、二十歳の俺はよく知っている。  淫魔の血に支配されかけている俺は、恥ずかしい言葉を次々に吐き出す。  先輩が勢いよく出し入れを始める。そのたびに卑猥な水音が耳を犯す。 「あっ、ああ、ふ、やぁっ!?あた、あたってる、きもちいいとこ、あたってるっ」 「ほら、こっちもちゃんとヤレよ」 「ん、ぐ、はぁ、おいひ…だひて!俺のくちにだひて!!」  そう言うや、口に入っていた先輩のものが弾けた。びゅる、ぴゅると口腔に広がる甘い液体を、溢さないように飲みくだす。 「次おれな!」 「後ろも変われよ」  そんな会話が、理性を失った耳に届いていたけれど、もはや理解はできなかった。

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