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偽りの窓の外 19
「笑い事じゃないって」
「陽斗だって頭いいんだしさ、一緒に医大行けたらいいのに」
「俺は早く自立したいの」
「ほんと、陽斗ってしっかりしてるよな」
何気ない会話をしている間も、和臣の方は何か言いたげな様子でそわそわしていた。
あまりにも不審な様子に、俺の方から話を切り出すことにした。
「和臣、何かあった?」
「……え、……うん。なんていうか」
目を伏せ口ごもる様子を見て、また彼女と別れたのかな……なんて安易に考えていた俺は、次の言葉に打ち砕かれることになる。
「……陽斗ってさ、経験ある?」
嫌な予感がした。
「何の?」
「……いや、あの…さ、アレだよ」
ほんのり恥ずかしそうに頬を染め、歯切れの悪さからなんとなく理解した。
……要するに和臣はこの夏休みに彼女と一線を越えるつもりだということだ。
照れたようなばつの悪い表情で俯いている和臣を見ながら、唇を噛み締めた。
今まで1か月と持たず価値観の違いかなんかですぐに別れていたくせに、今度の彼女は別れず続いていて、しかも俺がどんなに望んでも手に入れられない関係を手に入れるんだと思ったら彼女に対して猛烈に嫉妬した。
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