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面影の数だけ微熱が残る 3
俺の隣に座っているのは生理機能検査室の責任者である福田技師長で、上機嫌でビールを勧めてくる。
「今年の配属先会議は大変だったよ~」
どこか誇らしげな様子で技師長が話すと、向かいに座っていた先輩技師がその話に乗ってきた。
「へー、そんなに大変だったんですか?」
「どこの部署も野村くんを欲しがってねぇ! 本人が生理希望だから! って言って強引に引き抜いてきたんだ。野村くんは久しぶりに現れたホープだからね」
豪快に笑いながら俺の背中をバンバン叩いて技師長はさらに続けた。
「病理部なんて特に悔しがっていたんだよ! でも、本当に君は凄いよ。部署ごとのたった数か月の研修期間のうちに、新人が何年もかかって習得することを覚えていくのだから」
「いえ、丁寧な指導のおかげです」
「謙遜しなくていい。それは君の才能なのだから」
「まだまだです。これからもご指導宜しくお願いします」
「うん。これからも頑張ってくれ!」
この一年、本当に目まぐるしく過ぎていった。
覚えることが多く、辛く苦しいこともあったが、持ち前の器用さと努力のかいあって希望部署に配属も決まった。
俺は早く一人前の、それに加えて早く一流の技師になりたかった。
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