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面影の数だけ微熱が残る 7
人というものは着る服ひとつ、髪型ひとつで印象がだいぶ変わる。
目の前にいるマサルなんか特にそうだと思う。
学生のときのチャラチャラした茶髪も黒くなり、やや長めの毛先は軽くパーマがかけられているようで、サイドはナチュラルに刈り上げられている。
清潔感溢れるサラリーマンといった感じだ。
通った鼻筋と切れ長の目は涼しげで、長身の体型は細身のダークスーツを着こなしていた。
前の印象がだらけた大学生だっただけにイメージが変わりすぎだ。
するとマサルは頬杖をつきながら微笑んで言った。
「連絡先教えてよ。また飲みに行ったりしたいしさ」
「奢ってくれるなら教えてもいい」
そう言うとマサルはまた豪快に笑う。
「いいよ。それなりに稼いでるし。なんなら飲みだけじゃなくてもいいけどね」
マサルの視線に少し大人の色気が混じったのと同時に、マサルは俺の手からスマホを奪い自分に電話をかけて「登録しとけ」と言った。
「で、アキトは今なにやってんの?」
「俺たちの関係に、そんなの必要ないだろ」
「そこも、相変わらずだな。嫌いじゃないけどね」
そしてクスクスと笑うマサルとバーを出て、近くだというマサルの部屋に向かうことになった。
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