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歯車は噛み合わない 5

「告白とかしなかったの?」 「しないよ。関係が壊れるのは怖くて言えない」 「でも、野村くんが告白したら大概の女の子はOKすると思うけど」 「そんなことないよ。俺は臆病だし、友達でもそばにいれたら充分だった」 「へー、意外」 「そうか?」 なんとなく思い出した和臣との高校時代が懐かしくて自然と目が細まった。 すると静かに聞いていた上原が飲みものを口にしながら呟くように言った。 「そんなに大切な初恋なんだ」 「え、……」 「そんな顔してたから」 またズバリと言う上原に焦っているところを感じとられないように飲み物に口をつけると、今度はため息をつかれる。 「初恋こじらせてるから今も彼女なしなのね。モテるのにもったいない。藤森は藤森のくせに彼女いるのに」 「ホント、ホント」 上原に神崎が続けばまた藤森が声を上げた。 「もう、何回その話すんだよ!! でも、そういう二人は野村は狙わないんだな。最初の方、入職者飲み会とか結構野村に女子職員が群がってただろ?」 「今でもひそかに狙ってる子は多いよ」 「私はたまに僻まれて被害を被るときもある」

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