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歯車は噛み合わない 8
それにしても山田が結婚か……と、染々思う。
俺には縁遠い言葉だ。
今はまだ少ないけど、これからどんどんと結婚していく友達が増えていくだろう。
それに子供ができるのだってそうだ。
自分の遺伝子を受け継いだ分身がこの世に生まれるってどんな気持ちなんだろう。
俺は小さい頃から温かい家庭というものを知らない。
両親は覚えている限り仲が良かった印象もなく、共働きで忙しい人たちだった。
それに一人っ子だったからいつもひとりだった。
改めて俺は何も持っていない気がした。
───…そんなことを考えながら日々は過ぎていき、山田の結婚を祝う会の当日となった。
定時に仕事を終わらせて、山田に渡すために買ったプレゼントをもち会場に向かう。
店につくと8割りがたは集まっていたようで、山田がひらひらと手を振り、隣で彼女が軽く会釈した。
「おめでとう。よかったらこれ、結婚祝いに。気に入ってくれたらいいけど」
「え、いいのに」
「気持ちだけだから」
「気を遣わせて悪いな。ありがとう」
すると彼女もお礼を言いながら頭を下げた。
そして俺は空いている席を探し適当なところに座った。
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