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歯車は噛み合わない 10
「いや、今年のポリクリ生がやたら周りの女性技師たちからちやほやされててさ。今年の学生はストレートに進学してたら同い年じゃん? なんだか普段、虫けらのように扱われている俺は落ち込んでるんだよ」
「虫けらって」
「野村は虫けらみたいには扱われないだろうけどさ」
そういえばこの間、神崎がポリクリの学生は狙わないって話をしていたのを思い出す。
「同期の看護師は研修医は狙ってもポリクリの学生は狙わないって言ってたぞ」
「なんで? 医学生は未来の医者だろ?」
「卵には興味ないらしい。国家試験に合格した本物しか興味がないんだそうだ」
すると伊藤は目を丸くさせた。
「それもすげーな。可愛いの?」
「可愛いと思うけど、なんなら今度紹介しようか? 今は病院に来てるMRに夢中だが、稼ぎがあるか出世しそうなら大丈夫だ」
「いや、俺の稼ぎで満足されるかは疑問だな」
笑いながら、さっきの話を思い起こしていた。
“今年のポリクリ生はストレートに進学してたら同い年じゃん?”
頭に浮かぶのはもちろん和臣のことだ。
ストレートに行っていれば和臣もポリクリの真っ最中だろう。
計画的な和臣のことだ。
順調に医師への道を歩いているに違いない。
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