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憂える胸を焦がす 3
そして、今日は腹部エコーの担当だったので、簡単にその日の予約表を確認してエコー室に向かう。
エコー室は心電図などの検査を行う部屋からは少し離れた場所にあった。
そのエコー室に向かう長いスロープの先で技師長とポリクリの学生たちが立ち止まっている。
なにやら技師長から説明を受けているようだ。
そんな学生のうちの一人に、不意に目が止まる。
黒髪で背が高く、長い白衣がよく似合う。和臣だったらあんな感じかなって思ってしまった。
また悪い癖が出た。
無意識だったにせよ、仕事前に何を考えているのかとかぶりをふる。
でも、遠目にみてもよく似ている気がした。
あんな風に和臣は長身だから長い白衣が似合うだろうといつも思っていたからだ。
そうしているうちに学生たちの集団がどんどん近くなり、その横を通り過ぎようとしたとき。
和臣に似た学生の顔が気になって横目で見ようとした。
そんなとき技師長に「野村くん。腹部の予約枠だなんだが……」と呼び止められ、振り向いたその学生と偶然目が合った瞬間……。
あまりの出来事に体が硬直した。
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