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憂える胸を焦がす 4

まさか、そんなはずがない。 ここに居るはずがないのに……。 この大学じゃなかったはずなのに。 色んな言葉がぐるぐると頭を駆けめぐりながら、体の一つひとつの細胞が一気に沸騰するような気さえした。 幻を見てるんじゃないかと思うくらい位に目眩もする。 「野村くん?」 技師長が不思議そうに呼びかけたのも気付かず……。 「和臣…───?」 そう一言。ほぼ無意識に声を上げ、目を見開き立っていると次第に目の前の男の顔がほころんだ。 「やっぱり陽斗だ」 ───…まぎれもなく和臣だった。 信じられなかった。 和臣が目の前にいるなんて。 すると、俺らの反応を見た技師長が声をかける。 「なんだ? 知り合いか?」 技師長の声にハッとして「中高の同級生です」と告げた。 その場ではもちろん話などできないので、俺もすぐにルーチン業務へと向かったが、速くなった鼓動がおさまるのには少し時間がかかった。 そんな俺が次に和臣に会ったのは昼休みの食堂だった。

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