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憂える胸を焦がす 7
和臣は大学病院から少し離れたところにある学生寮に住んでいた。
学生寮と言っても管理人もいないし門限などもない普通のアパートのような建物で、間取りは6畳の1Kらしい。
家賃は安いが、大学病院まで少し距離があるから帰りが遅くなった時は少し億劫そうだった。
「陽斗は着実に社会人として成長してるって感じだな~」
「なんだよ、それ。和臣も頑張ってるだろ?」
「そうそう。毎日大変だよ。なんか気使うし」
そう言いながらジョッキを傾けごくりとビールを飲んだ。
ポリクリは本当に大変らしく、それだけ、医師になろうとするものは学ぶことが多いんだなと話を聞きながら痛感する。
「でも、俺、絶対に医者になりたいから頑張らないとな」
まっすぐなキラキラした笑顔は昔から変わらない。
俺が一番好きな表情だ。
そして残っていたビールを飲み干すと、まっすぐに俺を見つめ、その少年のようなキラキラした目で言ったんだ。
「陽斗も頑張って一人前の臨床検査技師になれよ! それで、一緒に病院作ろうな!」
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