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逃げたくなる気持ち 4
するとマサルは神崎に、見たことない笑顔を浮かべ微笑むと「アキトの彼女かな?」と尋ねた。
マサルの営業スマイルに頬を赤らめた神崎はオーバーにかぶりを振る。
「いえ、違います! ただの同期の友人です!!」
「へぇ、そうなんだ」
「あ、あの! MRさんですよね? 私、看護師の神崎 朋って言います。前に外来でお見かけしました!」
チャンスは逃さない神崎はここぞとばかりに自己紹介すると、マサルはニッコリとよそ行きの微笑みのまま神崎に名刺を渡した。
そしてついでだからと言って俺にも一枚渡してくる。
その名刺には、神崎の言っていた大手製薬会社の社名と、
『河北 賢 』という名前が書かれていた。
そして賢は、食い入るように名刺を見つめる神崎からは見えないような角度で俺の名札を持ち上げる。
目が合うと今度は俺がよく知る不敵な笑みを浮かべ、俺だけに聞こえるような声で囁いた。
「野村陽斗。臨床検査技師だったんだ。やっと知れた」
クスクスと笑う声だけが耳に残った。
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