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逃げたくなる気持ち 5

「休憩終わるから」 そう言って少しでも早く居心地の悪いこの場を立ち去ろうとした時、神崎がまた俺の白衣の裾を掴みながら賢に話しかけていた。 「あの! 野村くんと知り合いだったらご飯とか行きませんか!? 三人で!!」 「お、おい。俺は行かない!」 そう言ってるのに全く聞く耳を持たない神崎は、そのまま話を進めようとする。 その体は賢の方を向いているくせに、俺の白衣の裾をがっしり掴んで離さなかった。 「僕はいいよ。今日はどう?こういうのって、思い立ったが吉日っていうしね」 「もちろん今日でも大丈夫です! 私は19時には上がれると思いますけど、野村くんは?」 「俺は行かな……」 行かないと言おうとした時、今までに見たことのない形相でこちらを見る神崎がいて。 それはとても、行きたくないと言える雰囲気ではなくて……。 気迫に負け、俺も19時には終わるだろうと言ってしまった。 「じゃあ、20時に駅前にしようか」 神崎と賢は勝手に話を進め、やっと解放されたのは待ち合わせ場所が決まった後だった。 つか、賢のやつ。僕ってなんだよ。よそ行きかよ。 そんな憂鬱な思いの俺とは裏腹に、神崎は上機嫌だったのは言うまでもない。

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