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逃げたくなる気持ち 8
満足げな神崎はバスで帰るというのでバス停まで送っていき、時間まで三人で待っていた。
「朋ちゃん今日はありがとう、楽しかったからまた皆で飲もうね。今度は同僚も連れてきて朋ちゃんに紹介するよ。なんなら合コンにする?」
「合コンいいですね!!」
盛り上がる神崎と賢が番号を交換したころでバスが来た。
「ありがとうございました! また飲みましょうね~」
上機嫌の神崎はバスから手を振り去っていく。
そして本当は別々に帰りたかったのに駅までの道を不本意ながら賢と歩いていた。
「今日は陽斗のことがたくさん知れて楽しかったな~」
「俺は何も喋ってない」
「朋ちゃんはいい子だね。陽斗が教えてくれないこといっぱい教えてくれたし。ホープなんて凄いじゃん」
「神崎が大げさに言ってるだけだ」
やり手の営業マンなだけあって賢は人と喋るのが上手く、相手を乗せて必要な情報を得るのなんて造作もないようだった。
何年もひた隠してきたプライベートを暴かれることになり、最悪な気分を噛み締めていると、不意に賢が俺の腕をとる。
「初恋こじらせてんの?」
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