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逃げたくなる気持ち 10
すると賢の目が少し冷たさを増し、視線が鋭くなった気がした。
「でもそのこじらせた初恋相手とならするんだろ…─────?」
一瞬、心の声を悟られたのかと体が強ばった。
でもたじろぐわけにはいかず、声を荒らげることでしか自分を保てない。
「何なんだよ!!」
でも、俺が虚勢をはり鋭く睨むように見ても賢はまた動じることはなく静かに言い放つだけだ。
「オレは陽斗が欲しいだけだよ」
いつものようにヘラヘラしてるわけでもなく、まっすぐに見つめられるその視線は刺さる気がして耐え難い。
賢から少しでも早く離れたくて、駅に着いたと同時にたまらず駆け出した。
改札を抜け、何でもいいからと閉まりかけた電車に駆け込む。
そしてドアが閉まると同時にずるずるともたれながら座り込み、少しだけ上がった息を整えるように肩を上下させる。
賢とは距離を置こう。
もう、賢とはここ辺りが潮時のような感じがした。
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