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温もりが欲しいとか言えない 8
……何故、賢が和臣の名前を知っているんだ?
無駄に、コップを掴む手に力が入った。
思わず顔にも出てしまった気がする。
でも、俺の焦りなどは気にすることなく二人は話を進めていった。
「そうですけど。あれ? 俺、下の名前言いましたっけ?」
「いや千葉くんからは聞いてないけど、陽斗からよく聞いていた名前だったから、千葉くんのことかな? って思ったんだよ」
「えー、なんだよ陽斗。俺には河北さんの話しなかったくせに、俺の話はしてたのかよ」
「え、いや……」
嘘だ。俺は賢に和臣の話なんて一切していない。
なんせプライベートな話はほとんどしなかったんだ。
だから、賢が和臣のことを知っているはずなんてないんだ。
でも、賢は焦る俺のことなど構うことなく話をどんどん進めていく。
「よく聞いてたよ。ちなみに千葉くんは陽斗の初恋の話は知ってる?」
「聞いても教えてくれないんです」
「そうなんだ。叶わないのに未だに未練があるから次に進めないんだよね」
賢はさも知っているかのような口振りで、哀れむように眉を寄せた。
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