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温もりが欲しいとか言えない 9
「河北さんは知ってるんですか!?」
「知ってるよ」
「賢! でたらめばかり言うな!」
勝手なことばかり言う賢に思わず大きな声を出しても、賢は動じることなくにっこりと微笑むだけだ。
「また怒られちゃったな。いつも僕は怒られちゃうんだよね」
賢は相変わらずへらへらと笑うだけだったが、俺はなぜ賢が和臣の名前を知っていたかということばかりが気になって仕方がない。
そして会もお開きとなり、上原たちは和臣を連れて二次会をするらしい。
俺は明日が早いからと断り、賢も遠慮すると言ってその場で4人を見送った。
そして4人が見えなくなったころ、にっこり笑った賢が俺の顔を覗き込む。
「駅まで歩こうか? それとも、どこかホテル入る?」
「どういうことだ! なんで、和臣の名前を知ってた!?」
「なんか怒ってるみたいだね」
矢継ぎ早に質問を浴びせる俺を飄々とかわし、また賢はクスクスと笑った。
その態度もまた俺を苛つかせる。
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