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儚く溺れる 3

邪魔をしても悪いとは思ったが、本を渡すだけだったら時間も取らせないし、次にいつ時間がとれるかもわからなかったので和臣の家まで届けることにした。 だいたいの住所はわかってたけど、念のため住所をメールしてもらい向かう。 和臣の住む学生寮は大学や病院の距離もさることながら少し辺鄙な場所でもあった。 確かに毎日疲れてこの距離は大変だよな。 そんなことを思いながら歩いていると和臣が住んでいる学生寮であろう建物が見えてきた。 外見は寮というより本当にどこにでもあるアパートと言った感じで、和臣は外階段を上がった2階の一番奥の角部屋らしい。 インターホンを鳴らすと、少しだけ疲れた顔をした和臣が出迎えてくれる。 「これ、前に言ってた本」 「ありがとう。わざわざごめんな」 「いいよ。気にするな。じゃ、俺は帰るから」 ドアの隙間から部屋の中が少し見えて、机の上には本やらノートが散乱している様子から勉強の邪魔をするわけにはいかず、そう言うと和臣は目を丸くした。 「え、もう帰るのか? お茶くらい入れるからあがってけよ」 「でも、忙しいだろ?」 「いいの。それに俺も陽斗に渡したい本あるから」 そう言いながら、和臣は柔らかく笑った。

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