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儚く溺れる 6
幼いときから両親は不仲で喧嘩が絶えなかった。
幼い自分の目の前で罵り合ったりすることはなかったが幼いながらもその違和感は感じていて、自分の家が他の家とは少し違うのだということは理解していた。
不仲な両親は揃って仕事に邁進し、離婚後も父親は俺の学費や養育費に至っては十分なものを与えてくれていたし、祖母の家に移ってからも母は今まで通りバリバリ働いていたからお金に困ったことも幸いにしてない。
めぐまれた環境にいるにもかかわらず、贅沢な悩みなのかな。
公園の真ん中でボール遊びをしながら駆けずり回る子供を見ながらため息をついたとき、後ろから声がした。
「おーい、陽斗」
振り向くと和臣が手を振りながら走ってきたのが見えた。
「さっきの子は?」
「あいつはいいんだよ。隣のやつに任せてきたから」
どうやらあのアパートのほとんどは医学部の学生で、彼女もポリクリのレポートと格闘中だったらしい。
「ちょっと公園寄ってかね? 俺も息抜きしたいし」
そう言って公園のベンチに連れていかれ、自販機で買ったコーヒーを手渡された。
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