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儚く溺れる 8

いつも和臣が冗談で言うこの言葉に、少しでも悪意とかそういう感情が混ざっていれば悩むことはないのにと思ってしまう。 何もなくただ純粋に友情だけのキラキラした瞳が俺をひどく傷つけるんだ。 「和臣はどうして俺だったら価値観が合うって思ってんだよ」 「前にも言わなかったか? 趣味や思考とか似てるじゃん。それに、どんなに余裕がないときでも、陽斗といるのだけは疲れなかった」 「随分、自分本位な理由だな」 いつもなら何事もない感じで流せるのに、今日はなぜか苛ついてしまう。 「そうか? でも生まれ持った価値観とかってどうしても変えられないものじゃないのか?」 「じゃあ、聞くが、和臣は自分が余裕ないときに、俺が遠慮して疲れないようにさせていたとは考えなかったのか?」 すると和臣はひどく驚いたように目を丸くした。 「……え、そうだったのか!?」 「例えばの話だ」 本当は例えばの話でもなんでもなく、人一倍和臣の変化に敏感な俺は、和臣の性格上、メンタル面で負担をかけないようにとは昔から気をつけていた。 でも、一緒にいても疲れない程度にしか思われていなかったことに対して、そうなるように振る舞ったわけだから当然だと思う反面、少しがっかりしたのも否めない。

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