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儚く溺れる 9

「和臣が善意として受け取ってる行為にも裏があるかもしれないんだぞ。俺だって和臣に下心があって優しくしたのかもしれないし」 「でも、陽斗は普通に優しいだろ?」 「俺は……、優しくなんかないよ」 俺は親友の幸せすら素直に喜べない奴なんだ。 女と付き合えば、すぐに別れてしまえばいいとばかり考えて、結果的に好きな相手の不幸ばかり願っているような奴で、関係をどうにかする勇気もないくせに、自分の置かれている境遇がさも世界一不幸かのように感じている情けない奴。 こんな俺の本性を知ってしまえば、きっと和臣だって離れていくだろう。 そう思うと、より一層孤独感が増した。 どうすれば良かったのか? どうすれば、この胸の痛みが晴れるのか。 時間はゆっくり流れていく。 燦々と降り注ぐ太陽の光が反射して木々の緑はキラキラと輝いている中、 ふと和臣の方を見た。 目が合うと、柔らかい風が吹き、その風は周りの木々を揺らした。 「───…俺が彼女にしてって言ったらしてくれんの?」 何気なく出た言葉だったけれど、和臣の唖然とした表情を見て後悔した。

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