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儚く溺れる 11
自然の摂理とわかっていても虚しい。
自分にないものを持っているあの子が妬ましい。
あの子はすごく女性らしくて、いかにも守ってあげたくなるくらい小柄で、和臣と並んだ姿はお似合いだった。
同じ医師を志し、助け合って、男女の友情はいつか恋にかわることだってあるだろう。
一緒に病院をつくろうとか、自分の技師としての腕を頼りにされて、俺は自分の居場所を探してきたけれど。
結局、俺って何なんだろう。
俺は和臣に必要な人物なのか?
少なくとも、必ずいなくてはならない人物ではない気がする。
家族でも、これから家族になりうる間柄でも恋人でもないただの親友の俺は、いてもいなくても変わらない人間なのではないか。
それは社会の秩序というもので、ごく当たり前なことで。
今の職場だって、俺がやめることになったとしても検査室が止まることはない。
欠員を埋めるまでは人手不足の不調はあるかもしれないが、完全にストップしてしまうことはないし、いつかは俺の場所に違う人が補充される。
社会というものは、そういう風に成り立っていて、誰がいようといまいと回っていくものなのだ。
和臣とのことだってきっと同じなんだ。
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