113 / 250
儚く溺れる 12
でも、今の俺は流れに身を任せることしかできない。
家に帰っても同じことばかり考えて堂々巡りをしていた。
何も感じない無欲の人間になるか、こっぴどく和臣に軽蔑されるような何かがない限り、いつまでもこの矛盾に悩まされながら生きていくことになるんだろうな……って他人事のように思った。
自分が居場所を守るために作り上げた和臣の居心地のよい空間だけど、結局俺は和臣にとって都合のいい人間でしかなくて、そんな現実が自分で自分を苦しめている。
そんなとき、また賢から電話がかかってきた。
出る気にはならずディスプレイを眺めながら、どうして賢はこんな俺に連絡してくるのかと思う。
賢に対して好きだという感情を持ったことはない。でも、嫌いではない。
誰とも付き合ったことがないから、普通どんな状況や行動を経て付き合うことになるのかわからないけれど、みんな必ず好きあって付き合い始めるのだろうか?
たまには嫌いじゃないから始まることもあるのではないか?
……賢に寄りかかれば楽になれるのではないか?
と、また馬鹿なことを考えてしまった。
けど、叶うはずのない絵空事に精神を磨り減らすより健全かもしれない。
ともだちにシェアしよう!