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もの憂いげな純情 8
賢と最後に話してから、自分自身に対して良い意味で諦めが生まれたからだろうか、仕事にまで私生活の感情が影響するようなことはなくなった。
でも、仕事が終わればその反動か、ものすごく落ち込む。
その繰り返しで、相変わらず疲れているわりによく眠れない。
やっと、金曜日。長く感じた1週間が終わり、家に帰ると力が抜けた。
テレビをつけることもなく、食事もあまり喉を通らず、ただ時間だけが過ぎて気づくと21時を過ぎていた。
何もする気が起きずため息が漏れる。
そんな時、静かすぎる部屋にインターホンの音が鳴り響いた。
こんな時間に誰だと思ってインターホンカメラで外の様子を見てみれば……。
「な、なんで……」
そこには和臣の姿が映っていた。
動揺しているうちに、居留守を使うことにしたけど、しつこくチャイムを鳴らし控えめにドアまで叩く始末。
「陽斗。部屋に電気ついてるの見えた。いたら開けて」
隣近所に考慮しているのか控えめな声ではあったけれど、なんども繰り返すからさすがに近所迷惑になりかねない。
一体、和臣は何をするためにここに来たのか。
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