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もの憂いげな純情 9
強ばった顔のまま仕方なくカギを開けゆっくりとドアを開けると、和臣は心なしか柔らかい表情を見せた。
「開けてくれて、よかった」
予想もしない表情に戸惑いながら、何を言うつもりで来たのか意図もわからず部屋に招き入れ、ローテーブル前に腰かけた和臣から少し離れたところに座る。
しかし部屋に入ったきり和臣は何も喋ろうとしないので、部屋には沈黙が重苦しく続いた。
その沈黙はあまりにも重いもので耐え難い。
「……何か用があるんじゃないか?」
俺が声をかけると和臣はようやく口を開いた。
「……こないだの話がどうしても気になって」
やっぱりその話かと思いながら、ため息をつく。
「和臣には迷惑もかけないし、もう会わないから安心しろ」
俺は和臣に迷惑をかける気は更々なかったので、心を決めていた言葉を口にすると和臣はなぜか驚いた顔をした。
「え、それってどういう……こと?」
「そのままの意味だけど」
「もう会わないって!? え、なんで!?」
「なんでって、和臣が会いたくないだろ?」
「俺は今も会いに来てるじゃん。会いたくないわけないだろ!」
いきなり和臣が声を荒げるものだから驚いて目を丸くすれば、和臣はまた再び口をつぐんだ。
なんで俺が怒られないといけないんだ。
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