132 / 250

もの憂いげな純情 9

強ばった顔のまま仕方なくカギを開けゆっくりとドアを開けると、和臣は心なしか柔らかい表情を見せた。 「開けてくれて、よかった」 予想もしない表情に戸惑いながら、何を言うつもりで来たのか意図もわからず部屋に招き入れ、ローテーブル前に腰かけた和臣から少し離れたところに座る。 しかし部屋に入ったきり和臣は何も喋ろうとしないので、部屋には沈黙が重苦しく続いた。 その沈黙はあまりにも重いもので耐え難い。 「……何か用があるんじゃないか?」 俺が声をかけると和臣はようやく口を開いた。 「……こないだの話がどうしても気になって」 やっぱりその話かと思いながら、ため息をつく。 「和臣には迷惑もかけないし、もう会わないから安心しろ」 俺は和臣に迷惑をかける気は更々なかったので、心を決めていた言葉を口にすると和臣はなぜか驚いた顔をした。 「え、それってどういう……こと?」 「そのままの意味だけど」 「もう会わないって!? え、なんで!?」 「なんでって、和臣が会いたくないだろ?」 「俺は今も会いに来てるじゃん。会いたくないわけないだろ!」 いきなり和臣が声を荒げるものだから驚いて目を丸くすれば、和臣はまた再び口をつぐんだ。 なんで俺が怒られないといけないんだ。

ともだちにシェアしよう!