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もの憂いげな純情 19

よくわからない話はさらに続いた。 「澤村が陽斗のことばかり聞いてくるからさ、最初は陽斗の話とか教えたりもしてたんだけど。……陽斗とのことを真剣に考え始めた頃から、なんか……澤村に陽斗のこと教えるの、鬱陶しくなってきて……。それに陽斗が澤村を好きになっても困るし……」 ぼそぼそと喋りながら俯いた和臣は、「だから近付くなって言って牽制したんだ」と言った。 「陽斗のことを嫌っていて言ったわけじゃない。まさか、澤村と会うとは思ってなくて、傷付けたならごめん。陽斗を取られたくなかっただけなんだ」 何なんだよ。本当に何なんだ。 その目は真剣に俺を見据えていて、視線の重さにたじろいでしまう。 こんな真っ直ぐな視線や思いを受けたことなんてなくて、どうしていいのかわからない。 「だって、おかしいじゃん。なんで和臣が……」 口から出てくるのは、また逃げるような言葉ばかりで。 もう何度目かの後ろ向きな言葉を投げかければ、和臣が肩を掴む手に力を入れ、ぐっと顔を近づけた。 そしていきなり目つきが変わったかと思うと、心地よい低さのその声で俺を征すのだ。 「それ以上言ったらキスして口答えできなくするけど」 垣間見えた男の顔と、そんな言葉を和臣が言うとは思っていなくて胸がざわめき、俺は明らかに混乱していた。 そして和臣の顔が更に近付き、視覚でもキスされるんだとダイレクトに思ったその瞬間、思わず取った行動は……。 何故かとっさに手で、自分の口を覆い隠すことだった。

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